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 一羽の鳥が飛んでいく。
 果てのない青に包まれて行く先に、雲が転々と浮かんでいる。遥か地には大地と海が、緩やかな弧を描いて広がっている。
 目指しているのか偶然なのか、何よりも澄んだ一本の美しい虹が鳥の頭上に伸びている。消えない不思議な七色の帯は何処までも果てまで、この世界を一直線に伸びている。
  遙か昔に人は、この世界に名を付けた。
 『フィルアース』。
 今から二年前、二つの国によって行われた大戦により多くの犠牲と悲劇を生み出したこの世界は、休戦した今なおも、癒えぬ苦痛を人々の心に与え続けている。
 そんな時代の最中、人々によって伝えられている、ある一つの噂があった。
 「空を覆う幾重の虹が一つに集まる場所に、誰もが幸せになれる土地があるらしい」 。
 人々はその場所を、多くは虚偽だと決め付け、一部は本気で信じて、こう呼んだ。
 ――「幸せの土地」と。

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